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黒い服を着ない女

 

地味な服の女

私の職場には制服がない。
たいていは黒か紺のパンツスーツにシンプルな無地のトップスを合わせている。目立たないのが大事なので、当然のように色も地味。

同じ組み合わせの日が続いても気ならないし、そもそも昨日何を着ていたかも覚えていない。

黒い服を着ない女

そんな私。
ある日、何週間かぶりに打ち合わせに来た女性から

「黒なんて珍しいわね」
と言われてぽかんとしてしまった。

どうやら私の服装のことだと気づいて
「そうですか?」と聞き返す。

私の感覚では、黒い服なら週に5日は着ている気がするけれど?
でも彼女の印象は違うらしい。
彼女の中の私は、黒い服を着ない女。

彼女の中に刻まれた私のイメージを作っているのは、過去とはいえ彼女が実際に見た私。
だから私がどう思おうと、本当のところ、私は黒い服を着ない女なんだろう。

それは偶然が生んだイメージ。
そして彼女の印象はなぜか色しばり。

印象なんてそんなものみたい。

「私は黒が好きでね、いつも黒い服ばかり着てるのよ」

という彼女が、濃紺の琉球藍染風ワンピースを着ていたこともちょっと面白かった(もちろんいい意味で)。

他人の印象も、自分の印象も

思えば「私は〇〇なんです」って言われて
「そうそう、まさに。あなたってそんな感じですよね!」と思うことは滅多にないし

ここがポイントだと思った事柄についても
「きっと△△の部分ついては、もっと詳しい説明が必要だろうな」
と考えて準備をしていたら全く話題にのぼらず、全然違うところに興味を持たれることもある。

他人からの印象も、自分の印象も
全体のなかのどこか一部に焦点をあてているだけなのに、全体を見ているつもりになっているところは変わらないのかもしれない。

そして、気づいた!

彼女の言葉に???となった翌日
そういえば、ここ数回、彼女との打ち合わせでは「楽しい話」は出てこないと踏んでいた私は

「(暗い色よりは)明るい色を着ていこうか」

って思ってたかも、と気づいた。

まったく覚えてなかった。
でも、だとしたら、黒い服を選ばなかった(その時の)私の気持ちは彼女に伝わっていたということなのかしら?

服の色ひとつで彼女の気持ちが明るくなったとは思わないけど、
彼女の目に映る色をほんの少し明るくしたかった私の気持ちは(私の記憶には全く残ってはいないけれど)
カタチを変えて彼女に届き、そして彼女の印象に残ったのかもしれない。

 

そう考えると印象なんて、
ほんの些細な、本人にも覚えがないような「偶然」がつくっているのかもしれないね。そんなことを考えた。

 

とりあえず、彼女のひと言が
「りんさんて、いつも険しい顔をしてますよね」とかじゃなくて良かった。